シーリング工事とは、外壁のボードとボードのつなぎ目(隙間)をシーリング材で埋める工事です。
この他、サッシの金具と壁のつなぎ目などにも行われます。
シーリングをする目的は、つなぎ目から侵入する「雨漏りを防ぐ防水性」と
地震などにより建物が揺れた際に「伸縮性により建物を守る耐震性」にあります。
建物のガラスやサッシなどの周り、外装に使われるコンクリートのつなぎ目、外壁の仕上げなどに使用されるタイルのつなぎ目などから隙間ができます。
この隙間から雨水やホコリなどが建物に入ってこないように、シーリング材を充填することをシーリング工事といいます。
シーリングは環境によって異なりますが、紫外線の影響を受け約5年を過ぎたあたりから劣化がはじまります。
劣化が始まると!
外壁に0.05㎜以上の貫通した隙間が存在すれば、毛細管作用と重力の自然現象によって降雨水は室内に浸水し、浸入量は、壁を介して発生する室内外の圧力差(風圧)が大きくなるに伴って多くなる。建物外壁に計画的に配置された目地には、雨水浸入口となる隙間が存在するために、適切な防水的措置を講じる必要がある。
3つの条件が同時に満たされた場合に限って発生し、いずれか1つの条件でも欠如すれば雨水浸入は起こらない。
目地に発生するムーブメントは、その発生する要因によって次のように分類される。
劣化現象 | 劣化現象の内容 |
---|---|
被着面からのはく離 | シーリング材が被着面からはく離する現象、漏水の原因となる |
シーリング材の破断(口開き) | シーリング材に発生したひび割れが目地底まで達し、完全に破断している状態。漏水の原因となる |
被着体の破壊 | シーリング目地周辺の被着体にひび割れや欠落が発生する現象。漏水の原因となる |
シーリング材の軟化 | 紫外線、熱などによってシーリング材が軟らかくなる現象 |
ひび割れ | シーリング材表面に微細なひび割れが発生する現象 |
白亜化 | シーリング材表面が粉状になる現象。チョーキングともいう |
しわ | 目地のムーブメント、シーリング材の収縮になどによって、シーリング材が波打つ現象 |
シーリング材の変形 | 目地のムーブメントなどによって、シーリング材が外部方向へふくれたり、くびれたりする現象 |
変退色汚れ | シーリング材表面の汚れ、またはシーリング材の成分の一部が被着体の表面に付着して汚れる現象 |
仕上材の浮き・変色(ブリード) | シーリング材の上に施された仕上材(塗料、仕上塗材など)がシーリング材とはく離したり、変色を生じる現象 |
漏水またはその痕跡 | シーリング材の破断等による外壁部材等からの漏水またはその痕跡 |
シーリング材の種類 | 特徴 |
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アクリル系 | 硬化後、弾性体となり、湿った面にも使用可。 ALCパネルの立て目地 新築時のALCパネル目地に使われていますが、耐久性がないため、改修時にはほとんど使われません。 |
ウレタン系 | 硬化後にゴム弾力性を持つ。コンクリート、スレートなどに対し汚染がない。 耐久性は一番ありますが、そのままの状態ですと紫外線に弱く、また、ホコリを吸い付けてしまい汚れやすいため、塗膜で被せる場合に使用します。 |
ポリウレタン系 | 耐熱性、耐候性は劣るが、後塗膜や目地周辺の非汚染性(ノンブリード)に優れています。 シリコーン系と逆の特性がある材料です。 |
シリコン系 | シリコーン系とは耐熱性(-40度~150度まで)、耐候性に優れており、特にガラス類によく接着する特性があります。一方、目地周辺を汚染することがあるため、汚染防止処理が必要な材料です。 |
変成シリコン系 | 変成シリコーン系とは耐熱性(-30度~90度)、耐候性にはシリコーン系程ではないがよく、目地周辺の非汚染性にもポリウレタン系程ではないがよい特性があります。また、柔軟性がありムーブメントの大きい金属類への使用も可能な材料です。 |
油性コーキング系 | 皮膜を形成するが、内部は非硬化。 |
ポリサルファイド系 | 耐熱性(-20度~80度)、耐熱性には変成シリコーン系程ではないがよく、表面にゴミ、ほこりが付きにくい特性があります。一方柔軟性があまり無くムーブメントの大きい金属類への使用には適さない材料です。 |
シーリング防水の補修・改修のための調査・診断は「事前調査」と「劣化診断」に区分されます。この事前調査及び劣化診断は、日常あるいは定期的に行なわれる点検において調査・診断が必要された場合に実施するものであります。事前調査によって明らかになった不具合事項に基づいて劣化の程度を判断する劣化診断が行われます。
調査・診断は、改修を実施するかどうかを判定し、また、実施する場合は改修内容に対して大きな影響を与える重大な作業である為、専門の技術者(建築士、建築施工管理技士、シーリング管理士、シーリング技術管理士、ビルディングドクターなど)が行う必要があります。
なお、点検は、主に建物管理者が日常・定期・臨時(漏水等の異常発生時等)に実施する建物の性能及び機能を維持するために行う維持保全行為の一つであります。
劣化診断の流れについては図概略図に示す通りであります。
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診断レベル | 調査項目 | 調査手法 | 調査部位 |
---|---|---|---|
1次診断 | 対象とするすべての 劣化現象 |
目視観察 指触観察 |
容易に観察できる部位 |
2次診断 | 1次診断で故障の 認められた劣化現象 |
スケールなどを用いた 目視観察、指触観察 (脚立、梯子の利用) |
1階部分、開き窓、 屋上笠木、塔屋等 |
3次診断 | シーリング材の破断 及びはく離 シーリング材の物性 (硬さ試験、引張試験) |
上記の観察 切取検査(足場、ゴン ドラなどの利用) |
シーリング防水箇所の 各面ごとにその面積の 20〜30%の範囲 |